ごあいさつ

イノベーション ~継承される魂、革新する技術~

欧米に遅れること数年、経皮的冠動脈形成術(PTCA)が日本に導入されたのは1980年でした。高度成長期は我が国の医療も並行して発展していた時代でもあり、国内で最初のPTCAが行われてから瞬く間に全国で普及し、今日では国内の冠動脈カテーテルインターベンション(PCI)は年間30万例に迫っています。

PCIが冠動脈バイパス術を凌いで急激に普及し、これまで救えなかった多くの患者を救えるようになった背景には、この治療が日本の医学界の常識を覆したということがあります。医学の発信地は常に大学であり、海外で確立された新しい診断や治療は大学から派遣された医師が現地で学び、帰国後に大学で確立させ、そこから関連病院、そして、他の施設へと普及させていくのが通例でした。このことから新しい診断や治療は通常、欧米から遅れて日本に導入されてきました。全てが欧米に右へ倣えの医学界の常識に風穴を開けたのがカテーテルインターベンションでした。カテーテルインターベンションは、「大学が認めない治療はやってはならない」、この古くから縦型社会の医学界の伝統を破壊しました。

いつの時代も変わらず、若い世代の医師は派閥や縦の関係よりも1人の患者を救うことに強い使命感を持っています。選ばれた術者しか治療させてもらえない大きな組織に限界や不満を感じ、若い世代は大学を飛び出し、技術を究めるために大学の垣根を越えて、技術的に長けたマスター術者が所属する民間病院の門をたたきました。そこから生まれる横のつながりから、革新的なテクニックが開発されれば、気軽にその施設を訪問し直接指導を受けることもできました。時間的に余裕のない臨床現場の医師もライブデモンストレーションやワークショップなどでマスターのテクニックを学ぶことができるという環境があり、医局に属さずとも自らの技量が高められました。この一連のイノベーション、創造的破壊から生まれたのが日本のカテーテルインターベンションであり、技術的に世界をリードするまでに至った背景です。

「技術は成熟した」、「時代は変わった」、この領域を表すフレーズとしてこのような言葉が巷で聞かれるようになりましたが、我々は全ての虚血性心疾患患者を自らの技量で救うことができるようになったのでしょうか。カテーテルインターベンショニストの道を選んだ以上は、技術を究め、目の前で苦しむ患者を自ら救うという不屈の精神を持ち続けなければなりません。この精神がカテーテルインターベンショニストの“魂”であり、継承され続けてきたものです。

9回目を迎える豊橋ライブデモンストレーションコースでは、「イノベーション ~継承される魂、革新する技術」をテーマとしました。今回も例年通り、厳選されたマスター術者の手技をライブや座学を通じて学んでいただき、さらに、マスターの後進育成術についてもご紹介します。技術のみならず、マスター術者が先人から継承されてきたインターベンショニストとしての“魂”を、プロクターライブを通じてお伝えします。

カテーテルインターベンションの歴史はイノベーション、創造的破壊から始まりました。豊橋ライブはそのDNAを継承しつつ、これからも飽くなき挑戦を続けていきます。皆様に、さらに進化した豊橋ライブをご覧いただけることを楽しみにしております。


東海ライブ研究会 代表世話人 鈴木 孝彦 (豊橋ハートセンター)